クラウド型会計ソフト
会計ソフトには主にパッケージ型とクラウド型の2種類があります。
従来型であるパッケージ型会計ソフトは、弥生会計に代表されるように、既に製品としで箱の中にCDROMで封入されており、CD-ROMからパソコンにインストールをするタイプ。
パソコン用ソフトとしては最も想像がしやすいものと言えます。
一方のクラウド型は、パソコンへのインストールが不要で、ネット環境下にある(ネットに繋がっている)パソコンのブラウザ上で動作するタイプのアプリケーションとなります。
従来型ともいえるパッケージ型会計ソフト、いわゆるインストール型のソフトですが、クラウド型会計ソフトが世に出回るようになってからというもの、双方はそれぞれのメリットとデメリット、特に費用対効果の面で度々比較されるようになりました。
2020年現在においての双方の利用シェアは、パッケージ型が約80%、クラウド型が約15%と、やはりこれまでの歴史の通りパッケージ型のほうがまだまだ利用されています。
一方のクラウド型はまだまだ発展途上中といったところでしょうか。
本記事ではパッケージ型会計ソフトとクラウド型会計ソフトそれぞれのメリットとデメリットについて比較してみたいと思います。
パッケージ型会計ソフトのメリットとデメリット
それでは従来型ともいえるパッケージ型会計ソフトについて、メリットとデメリットをみていきましょう。
メリット
①機能が多く動作が安定している
既存のPCにインストールするので安定して動作します。
クラウド型と違い、オフライン環境であっても問題なく使用出来るのが最大のメリットでしょう。
②ユーザー数が多い
弥生会計に限定して話を進めますが、ユーザー数が多いので、何かしらのトラブルに見舞われてもネットでググれば解決策が比較的簡単に検索出来るのもメリットです。
クラウドに比べてまだまだ8割の使用者がいるパッケージ製品。その中でも弥生は群をぬいてシェア数ではやはりナンバー1なので、使っているユーザーが多いというのはそれだけ同じ悩みを抱えているユーザーも多く、比例して解決策もネット上に散乱しています。
個人的見解ですが、税理士さんのほうが操作に慣れていることもあり、税理士さんに不具合を解決してもらったことも少なくありません。
③クラウド型に比べてセキュリティー面では安心
1台のPCにインストールして使用するので、PCにセキュリティーソフトを導入していれば、セキュリティー面は安心です。
さらにオフライン環境で使うのであれば、情報が漏洩することはまずあり得ません。
会社の財務等の情報を一手に扱う会計ソフトだけにセキュリティを心配される経営者さんや担当者さんも多いはずですが、これはクラウド型が登場したことによりクラウドのセキュリティー面が指摘されるようになったことで、パッケージ型がセキュリティーにおいてはクラウドに比べて優秀であるという面がフォーカスされたように思います。
いずれにせよ、第三者に情報が漏れるということは殆ど心配しなくて良いのがパッケージ型のメリットであると考えます。
④税理士さんとの連携が簡単
弥生会計(青色申告)であれば、日本全国殆どの会計事務所で受け入れが可能と思います。
中小企業で導入しているソフトにおいては、弥生会計が持つシェアの割合が多いことに起因します。
逆に中小企業を顧客に抱える会計事務所や税理士さんからも、導入の際に弥生を進められることも少なくありません。
先述したとおり、パッケージ製品ではダントツのシェアを誇る弥生だけにユーザー数も多く、アップデートに関しても迅速に対応するあたり、流石に製品としての安心感はダントツです。
会計事務所とのデータのやり取りにおいても、バックアップアイルをワンクリックで作成してメールに添付するだけなのでとても簡単に出来ます。
デメリット
①使用する環境が限定される
1台のPCのにインストールするので、インストールしたPCでなければ使えません。
(弥生会計2ユーザーのように、2台のPCのにインストール可能な複数ライセンス込の製品を除きます)。
従来型からすると当然なのですが、ブラウザを立ち上げると別の場所でもソフト感覚使用することのできるクラウド型からすると、これはかなりのデメリットでもあります。
②年間サポート料
弥生会計に代表されるように、サブスプリクションにも近いように年間の維持費がサポート料という形で掛かります。
これはサポートに入らなければいいのですが、サポートを受けないと致命的なアップデートが受けられなくなるなど、問題も多く発生します。
例えば、令和元年10月に施行された消費税の税制改正のように、消費税が8%から10%に上がる時など、サポートを受けていなければソフトの消費税率を変更できないなどのデメリットが発生します。
であれば、普段はサポートを受けずに令和元年のような大型の税制改正の度にソフトを買い換えればいい話なのですが、一旦サポートを切ってしまうと製品買い替えの際のデータ移行など、PC操作が苦手な方にとってみれば面倒なことばかりなのです。
個人事業主の場合、弥生の青色申告であれば年間のサポート料金は8,000円で大した金額でもありませんが、これが毎年掛かるとなると10年間のうちにトータル8万円を収めなければならない訳です。
弥生会計スタンダードに至ってはセルフプランで年間27,200円ですから10年間使い続けると、272,000円にもなります。
③PC不調時には最悪ソフトが使えない期間が発生
1台のインストールした専用のPCでのみ使える環境であるので、当然ながらそのPCが故障した際などは、帳簿の入力ができなくなります。
管理人も弥生会計を使っているので、過去にマザーボード(パソコン内部のメイン基板)の不調時に1週間ほど使えないことを経験しています。
そうなると、全ての取引の入力ができなくなり、残高試算表などの閲覧や出力なども出来なくなってしまいます。
クラウド型会計ソフトのメリットとデメリット
ここ数年の間にめきめきと頭角を現すかようにメジャーになりつつあるクラウド型会計ソフト。
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システム自体はまだまだ発展途上中であり、パッケージ製品と比べても機能面でやや劣るなど、実際にパッケージ版から移ったばかりのユーザーを悩ませる部分も多いことが指摘されています。
しかしながらパッケージ版と比べても圧倒的に有利な部分もあり、まさに近未来的な会計ソフト=クラウドという既成概念を覆すこのシステムは、将来的にはさらに需要が高まる事が期待されています。
では、クラウド型会計ソフトのメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
使用場所、使用端末を問わない
PC/Macの垣根を超えて使用が可能です。
ブラウザ上で動作するので、固有の端末でしか使えないという概念からは開放されることになります。
例えば、会社でやり残した帳簿の入力業務を自宅に帰ってから自分のPCで続きが出来るという事が最大のメリットでしょうか?。
弥生製品のパッケージ版で言えは、複数の端末で使用する、いわゆる2ユーザー仕様の製品の場合、年間のサポート料もその分上乗せになりますが、クラウド型の場合はそのようなコスト的なしがらみは皆無となります。
テレワークにも対応
前項にも類似しますが、ネット環境とPC/Macさえあればどこでも動作するので、自宅で仕事が出来ます。
コロナ騒動でテレワークが重要視されるようになりました。
大企業から中小企業に至るまで、経理部門というのは、社内の専用の端末でしか経理の業務が出来ませんでしたが、クラウド型であれば伝票の整理程度でしたら在宅でも作業が可能であり、さらにそのデータをオンラインで上司や同僚と共有できるというのも最大のメリットかも知れません。
あとはハンコ社会がどうにかなってくれれば◯ですね......。
コスト面
クラウド型はほぼサブスクリプション型の料金体系と言っても間違いではないでしょう。
つまり、サービスを使い続ける限り月額料金が掛かり続けるということです。
これはパッケージ型であっても保守サポートを受けていれば同じことですが、両社の料金的負担いわゆるランニングコストを比較した場合、安さの面ではクラウド型に軍配があがります。
個人事業者の場合は、年間使用料で比較しても数千円程度の差で微々たる金額かも知れませんが、チリも積もれば.....です。
言ってみてば、クラウド型はネット環境が必要ですからネット接続料、つまりプロバイダ料金が掛かりますが、今の世の中ネット環境を構築していない事業所のほうが珍しいでしょうから、プロバイダ料金についてはここで言及するに及ばないでしょう。
データ喪失の心配がない
クラウド会計はサービスを提供している運用先のサーバーに会計のデータ、コンテンツマネジメントシステムの全てを収納しています。
つまり、良くも悪くもユーザー自身のPCの端末に会計関連のデータは残らないので、万がいちのことがあってもデータを喪失する心配もありません。
ネットバンク、クレジット決済システムとの連携がしやすい
クラウド会計はその運用自体をネット上で完結するため、同様にネット環境を使用するクレジット決済サービスやネットバンキングなどのサービスとも相性がよく、一部のサービスでは取引の自動仕訳化も進んでいます。
そんな意味では、PC1台あればどこにいても商売が出来るというもの。
会計の知識もありネット環境にも精通しているような全国を飛び回る経営者兼ビジネスマン、つまり従業員を持たない一人社長のような方の場合は、まさにうってつけのシステムと言えますね。
ユーザーによるアップデート不要
機能の追加やバグの修正など、クラウドシステムならではのメリットもあります。
もちろん、従来のインストール版のものでもアップデートは可能ですが、ユーザーが自ら操作しなければならないので手間が掛かりますが、クラウド版は使った瞬間に勝手に変わってくれています。
もちろん、契約先のサーバーに格納しているプログラムを書き換えるだけですからユーザーにアップデートの手間を取らせる事はありません。
気がついたらUIが変わっていた...というもも、今風で良いですね。
しかしながら、使い勝手まで変わってしまえば本末転倒ですが.....。
クラウドならではの会計ソフト+α機能
クラウド会計サービスを提供している事業者によっては、クラウド会計環境の提供に留まらず、確定申告や請求書発行までしてくれるサービスを提供してくれるところもあります。
つまり、パッケージ型会計ソフトとほぼ同等のランニングコストでありながら、プラスαの機能を付随サービスとして提供してくれるというのは、小規模事業者であればあるほど、とてもありがたいサービスと言えるでしょう。
デメリット
このようにクラウド会計システムはメリットがたくさんあります。
しかしながら、パッケージ版と比べた場合、デメリットが全く無いわけではありません。
同様にデメリットをあげてみます。
ネット環境必須
クラウドシステムなので当然ネット環境が必要です。
ブラウザ自体の速度もすべてネット環境に依存しますので、多少なりとも場所や時間帯によってはブラウザの更新の反映にイライラすることもあるでしょう。
万がいち、プロバイダがダウンしてしまった場合や大規模停電に遭遇などしてしまえば、それらが復旧するまでは使用出来ません。
まぁ、停電に関してはパッケージ版であっても一緒です。あ、電池駆動のモバイル端末の場合は別ですね....。
ネット環境に対しての知識も必要
前項の題目の通り、ネット環境が必須なのはお分かり頂けたところで、次に必須となるのはネット接続に対しての最低限の知識も必要です。
クラウド会計システムはネット環境をもとに受けられるサービスであるが故に、接続する先のインターネットに対する知識が無ければ、もしも何らかの影響で端末がネットに接続出来なくなった場合の対処が出来ないとサービス自体を利用することが出来ません。
企業の場合であれば専属の情報システムを扱う部署の担当者さんやその手の問題に精通している社員さんがいれば対応してくれるでしょう。
しかし小規模事業者、とくに個人事業者でPC操作が苦手でネットについての知識も浅はかである場合は、最悪の場合業務が停止してしまうリスクも考慮して導入する必要がありそうです。
セキュリティーに難あり
クラウド会計システム自体はサービスを提供している事業者単位で、SSL暗号化通信や独自のセキュリティシステムを構築しています。
しかしながら、ユーザー側は既存のブラウザを利用してクラウド会計システムを利用するわけですから、ブラウザ自体の更新プログラムのアップデートの実施、または端末自体に
または、持ち歩けるノートPCやタブレットなどの場合はFACE IDや指紋認証を駆使して、ちょっと席を外した際に第三者に不用意にブラウザを覗かれないような配慮も必須です。駅や空港、街なかのカフェなど公共の場所では特に注意が必要です。
税理士さんや会計事務所が対応していない場合が多い
TKCや弥生をメインに取り扱うことの多い会計事務所にとってみれば、様々なクラウド会計システムを利用する顧客のニーズに応えるために各社のクラウド会計システム全てと契約して運用するというのは、あまり現実的なものではありません。
そのため、新規顧客から顧問契約の依頼を受けたとしてもその顧客がクラウド会計を利用していたとすると、顧問契約を断れる可能性があります。
現時点では対応してくれる会計事務所も限定されるようですので、確定申告を自分で出来ない方や特殊な業種の場合はこれからお世話になるであろう会計事務所にじっくり相談してから決めたほうが良いでしょう。
特に開業前の個人事業主がむやみにクライド会計を利用するのは、あまり賢い選択とは思えません。
まとめ
クラウド型会計ソフトとパッケージ型会計ソフトのメリット、デメリットをそれぞれ比較してみました。
記事中で紹介したとおり、パッケージ型とクラウド型のシェアはそれぞれ80:20程度ということで、まだまだパッケージ版のほうの需要が多いのが実情です。
しかしながら、これはパッケージ版そのものの歴史が長いだけの話なので、現時点でのシェアだけを単純に比較対象にするのはあまりスマートとは言えません。
それぞれのメリット・デメリットをユーザーさんそれぞれの業種や仕事のスタイル、職場の環境に合わせて考慮すれば、パッケージ版、クラウド版のどちらが自分の環境に相応しいかが見えてくるはずです。
悩んだ挙げ句実際に導入してみてしっくり来なかったら、やり直せばいいだけです。取り返しがつかなくなることはありません。
しかし、システムを乗り換える場合は、データの抽出(連携)などをしっかりと対処した上で行いたいものです。
では。