好きでフリーターを目指したわけではないけれど.....
地方の片田舎から初めて都会に出た18歳。
専門学校に進学するために親元を離れました。
機械いじりが好きだという理由で工業高校の機械科に入学し、充実した3年間を過ごしました。
しかし、自分が本当にやりたかったのは情報処理でした。
将来の夢はシステムエンジニアかプロフラマーでした。
なので、親に頭を下げて専門学校に進学させて貰いました。
結局、専門学校というところは資格を取るべき学校であり、資格を取らない(取れない)のであれば進学しても意味が無いものです。皆様ご承知とは思います。
結果、専門学校卒業の頃に日本経済はバブルが崩壊して、一気に奈落の底へ転落します。
私自信もそのような時代背景のせいにしてしまいますが就職に失敗。
学生時代に出前のアルバイトをしていた寿司屋で職人の道を選び進みます。
そんな管理人の不幸な見習い時代は上記をご覧頂くとして、今回は寿司屋を辞めてからの話になります。
専門学校にまで行かせて貰いながら就職にも失敗し、挙げ句に目指した職人の見習いにも挫折する。
自己嫌悪に陥りました。
とても実家に帰られるような面でもなく、かと言って就職先すらない。
途方に迷いましたが、当時の私にはフリーターという道しか見えませんでした。
24歳でフリーターの道に
いや、寿司屋の見習いも実はフリーターのようなものです。
社会保険にも入れませんでしたので国保+国民年金納税者でした。
寿司屋を辞めた時の所持金は1最後に貰った給料の10万円だけでした。
でも、すぐに家賃を払わなければなりません。
水光熱費も口座から引き落とされますので、自由になる金なんてありませんでした。
なので日雇いで日給が貰える仕事を探しました。
工事現場でも建築現場でもなんでも良かったんですが、求人情報誌を見ていると ”人材派遣” という職種に目が行きました。
派遣会社に登録して仕事を貰います。その日の仕事が終わったら事務所に行くとその日のうちに給料が貰えます。
フルタイムの8時間の仕事で大体6000円くらいは貰えました。
得意だった飲食業系の深夜のバイトのほうが稼げるのは分かっていましたが、なにぶん所持金が乏しかったので、すぐすぐお金が欲しかったので日雇いの人材派遣にしたのでした。
しかしながら、登録をしたからとて、すぐに翌日から仕事を貰える訳ではありませんでした。
新人だと、なかなか簡単には仕事が貰いないのだそうです。
仕事が貰いない日が1週間近く過ぎました。
10万しか無かった所持金も、アパートの家賃と光熱費や携帯代を払うと殆どありませんでした。
親に頭を下げてお金を借りようかとも思いましたが、そのくらいだったら寿司屋を辞めた直後に実家に帰ったほうが利口です。
そのまま都会で暮らして何らかの結果を残したかったので、親の力は借りずに自分で何とかしようと絶対に親には金を借りませんでした。
所持金残り2000円。
派遣会社に仕事が貰えるか電話をすると、ようやく仕事が貰えました。
初めての仕事は、100円shopの品出しのお手伝いでした。
朝イチで事務所に来るように言われたので、翌朝電車で事務所に向かいました。
前日に夕ご飯を買い、当日の朝の移動でも電車代を使ったので、所持金は残り1,000円になっていました。
すると、今日勤務する店舗が新幹線でひと駅の場所ということで新幹線で移動しなさいとの指示。
新幹線代は給料と一緒に出すので立て替えてくださいとの事でした。
二人での作業でしたので、相方が一人。
見るからに自分よりも年下のお兄ちゃんでした。
しかし、駅に着いてから問題が発覚しました。
新幹線代を立て替えなければならないのに自分の所持金は1,000円しかありません。
ひと駅分の新幹線代は1,300円でした。
チケットが買えない。
お昼ご飯は我慢するにしても新幹線のチケットも買えない.....。
仕方なく、初めて一緒に仕事をするそのお兄ちゃんに頭を下げてお金を借りました。
年上である自分が、初めて一緒に仕事をする年下のお兄ちゃんにお金を借りるなんて....
自分の情けなさに愛想が尽きそうでした。
しかし生活費を稼がないと明日から食っていけません。
一時の恥をかけばいいか.....と開き直ります。
そのお兄ちゃん、これまた超いい子なのでした。
見ず知らずの年上の男に初対面で”金貸して”って言われたら、だれだって”カツアゲ!?”って勘違いされそうなものですが。
あ、でも自分はそういう系のキャラではないです。
1,000だけ借りるつもりが、その子は ”お昼代も無いですよね?” と言ってくれて、結局2,000円を借りる事に。
自分が相手の立ち場だったら、果たして同じようにしてあげられるのか?疑問でした。
その日の仕事を終え、一緒に事務所に向かい初めての給料を貰います。
日給6000円と、新幹線立替分の1,300円で計7,300円。
すぐさま彼に借りていた2,000円を返して、所持金は5,300円。
昨日、いやその日の朝の財布事情に比べればいくらかマシです。
そのまま事務所で明日も仕事を貰えるか聞いたところ、今日と同じ100円shopに行けるか?と聞かれたので速攻で返事をし、翌日から1週間程度その店に新幹線で通いながら仕事をしました。
もちろん、相方のお兄ちゃんも一緒でした。
それからの派遣の仕事については、下記の記事をご覧ください。
派遣の仕事で気づいた職業に対しての価値観
上記のリンク記事をご覧になれば、フリーターが所属する派遣会社がどんな仕事をしていたのかがお分かりになったかと思います。
人材派遣業は、お客様である各企業からの依頼により人材を派遣する仕事。単日あたりの派遣会社と企業との契約上の料金は、単日あたりの派遣料こそ高額ですが、この日だけこの週だけ急遽人員が欲しいなどという融通を効かせられるのが派遣業の人材を使う企業側のメリット。
従業員を抱え込まなくてもいいのでトータル的な人件費は削減できます。
そのお陰で派遣会社に登録する我々は仕事が貰えて、日払いで給料が貰えるわけです。
そんな派遣業ですが、お客様からの依頼によって、その日の仕事は様々です。
ある日のこと、仕事を貰おうと事務所に電話すると、一番やりたくなかった仕事を言い渡されます。
その仕事とは言ってみれば携帯電話を売る仕事なのですが、”携帯電話を売る”のではなくて、”人を騙して携帯電話を契約させる”という仕事でした。
ほとんど詐欺商法です。
やり方はこうです。
スーパーやホームセンターの入り口に抽選会のブースを設けて、そこでご来店頂いたお客様にくじ引きをしてもらいます。
クジの内容は、
一等.....商品券 10,000円分
二等.....お米10kg
三等.....携帯電話
と書いてあります。
しかしながら、実はクジのBOXには ”3等の携帯電話” と ”ハズレ” しか入っていません。
つまり、携帯電話のクジを引かせてそのまま契約をさせるという悪質な手口のものです。
これは、とある携帯電話の代理店からの依頼の仕事なので、もちろん我々が好きでやっている訳ではありませんでした。
派遣業界で働くスタッフは、依頼主であるお客様と仕事は選べないのです。選べないというよりは、選べる立ち場に無いといったほうが正解でしょうか?。
そのような詐欺まがいの仕事だったので、事務所の中でも人気がなくて人材を確保出来ない事務所側も焦っていました。
そんなこんなで事務所からも無理やり
って言われる始末。
それを断ると、仕事が貰えなくなる恐怖心から、渋々行く羽目になります。
スーパーで買い物を終えて出てきたお客様にクジを引いて貰い、わざと3等の当たりくじを見せて
と当たり券を見せると、携帯を持っていないお客様は大喜びで、欲しい人はそのまま契約をしてくれます。
本当にその人が欲しいと思っていたのなら、無料で携帯電話が手に入ったので、悪い事をやっているという罪悪感も少しはほぐれました。
しかし、やっている事は殆ど詐欺商法のようなもの。
それも、毎日毎日同じ店の入り口で同じ事をやっている訳で...。
スーパーなんて毎日同じお客様が買い物に来て当たり前の店舗なので、”自分たちは携帯電話を無理やり契約させられる悪徳業者さん”のような扱いを受けるようになります。
契約が取れないと、依頼主に怒鳴られます。
胃が痛くなります。
私も仕事と割り切って最初のうちは頑張りましたが、だんだん良心が傷んでいきます。
数字が取れなくて怒鳴られるのも精神的に嫌でしたが、罪もない一般の人にこんな悪徳な商法で携帯の契約を押し付けている自分に腹が立ちました。
その携帯電話の仕事は、その後一切断る事にしました。
28歳 人生の岐路に
携帯電話の仕事を断った後は、健全な仕事しかしないという意志を事務所にはっきりと伝えました。
それからは、大型家電量販店での携帯電話のブースでの販売契約の仕事や、PC系を企業に納品するセットアップを担当する仕事など、クリーンな仕事ばかりを優先してやりました。
クリーンな仕事は胸を張って仕事が出来ます。
”人の役に立っている”という自負が、やがて自信に繋がっていきます。
”ありがとう”とお客さまから声をかけられる事が当たり前になっていました。
そう思えた瞬間に、自分の職業に対しての価値観というものが芽生えました。
だから、自分は人に感謝される仕事の世界で生きる事を決めました。
そう決心が付いたのは人材派遣の仕事をかれこれ4年ほど経った頃でした。
24歳で寿司屋の職人をリタイヤし、その後派遣会社で働き、気がつけば28歳になっていました。
まだ自分はフリーターという立ち場です。
社会的地位も保証もこれといってありません。
ただの日雇い労働者です。
携帯詐欺の仕事が逆に自分の人生、そして職業に対しての価値観を変えてくれた....いや、間違いに気づかせてくれた。そう思いました。
私は故郷に戻り正社員になる覚悟を決めました。
まとめ
世の中には様々な職業があり、みんな生きていくために必死で与えられた仕事をしています。
先述の通り、詐欺まがいの商法で契約を迫るような悪徳な業者やそれに携わる人材も後を絶たない訳ですが、私は若かりし頃に経験たことで自分の仕事に対する考えかたと価値観を見いだせたようなものです。
感謝されなければ意味がない。
詐欺的な商法を除けば、この世の中に無駄な仕事なんて無いと思うし、誰しもがやっている仕事は必ずどこかで人の役に立っている。
そう思う事こそが、その人それぞれが仕事に対するやり甲斐になるのではないか?と考えます。
人から「ありがとう」と感謝される事こそが仕事の醍醐味であり、究極なのだと思います。
フリーターから正社員になって、全うな人生を歩もうとしたきっかけは、私にとってはプラスに働きました。
私はフリーターを卒業したのが28歳でした。
これが早いか遅いかは分かりませんが、早い遅いは個々が判断することであって他人にとやかく言われる事ではないと思いまます。
転職のタイミングも仕事との出会いも人それぞれです。
もしも、フリーターの方でこの記事をご覧になっている方が居るのであれば、周囲の言葉やプレッシャーに流されることなく自分が「ここだ!」と思ったところで正社員への転職を真剣に考えればいいと思います。
その人のタイミングはその人じゃないと分かりません。
その人の気持ちはその人じゃないと分かりません。
でも、もしもフリーターを卒業したいと思っているのだったら、一日も早いほうが自分のためになるのは確かだと思います。